研究概要 |
本研究ではTrkBのリガンドであるBDNFとNT4/5がマカクサル脳の発達に伴ってどのような変遷過程を示すのかを検討した。 まず成熟カニクイザルの各脳領域におけるBDNFとNT4/5をELISA法により定量した結果、BDNFは海馬に最も多く、大脳皮質内では前頭連合野、側頭連合野、頭頂連合野に一次視覚野より3倍多く存在した。一方NT4/5はBDNFと比較して極めて少ないが、小脳に比較的多く存在した。またBDNFの発達を調べると、大脳皮質のどの領域においても胎生120日から上昇し、生後2ヶ月に最大となり、成熟期に向かって減少した。一方NT4/5は胎生140日に一過性のピークを示し、出生時に成体とほぼ同量レベルまで低下を示した。海馬ではNT4/5はほとんど変化せず、一方BDNFは成熟期まで増加した。BDNFの変化は大脳皮質におけるシナプス数の変化と関連し、NT4/5はソマトスタチンの遺伝子発現と相関が認められた。従って、霊長類の大脳皮質や海馬の生後発達と成熟期の機能維持においてBDNFとNT4/5が異なる働きをもつことが示唆された。この成果を現在Cerebral Cortexに投稿中である。またBDNFに関する免疫組織化学法を確立し、BDNFがマカクサルの海馬の顆粒細胞、CA1,CA2,CA3と海馬台の錐体細胞に存在することを証明した。この成果はBrain Res.918:191-198(2001)に掲載された
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