研究概要 |
これまで行った研究によって,標準的だと考えられてきた神経スパイク発生モデルが棄却されることが明らかになった.次に,実験データと理論モデルとの矛盾を解決するために,理論モデルの修正をおこなった結果,神経細胞に入射している信号は無相関ではなく,100ミリ秒程度の時間相関を有しているという推定結果を得た.本年度は時間変動ポアソン過程に関する数理的考察を推し進め,活動中のサル前頭連合野から得られたスパイク統計をコンパクトに再現することに成功した(Physical Review E 64(2001)041910).その論文では大脳皮質から計測された神経スパイクデータの統計的性質をコンパクトに再現する単純な数理モデルとして時間依存ポアソン過程をとりあげて分析した.具体的には3種の時間依存ポアソン過程によって生成されるスパイク列が,変動係数CV歪度係数SK連続した間隔の相関係数CORの統計空間でどのように分布するかを解析的数値的に明らかにし,前頭連合野から計測されたデータと比較した.その結果二重確率過程がデータに照らし合わせていちばん適切なモデルとなっていることが分かり,またそのスパイク生成確率変動の時間スケールや振幅を推定することも可能になった.また,脳切片スライス実験の準備実験では,従来の細胞内通電実験の技能を習得した安定した結果が出来るようになった.次には標準的な細胞内通電実験とは異なる新しい実験プロトコルに綿密な検討を加え,実験に必要となる補助装置を導入しその作動を確認した.
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