研究概要 |
Caspase-1,-11を含むCaspase-1サブファミリーは特に炎症の制御あるいは炎症に伴って見られるアポトーシスにおいて関与が大きいと考えられる分子群である。Caspase-11はCaspase-1とCaspase-3の活性化を正に制御することが知られている。炎症と細胞死を特徴とするEAEにおいてCaspase-1サブファミリーが重要な役割をしていることが予想される。合成MOGペプチドをC57BL/6マウスに投与しEAEを誘導し、病状がピークに達した時点で脊髄のライセートをCaspase-1,-11抗体でウエスタンブロットするといずれもが強く発現上昇していた。さらに脊髄の免疫組織染色でOLGにはCaspase-1, -11,活性型Caspase-3が強く発現していた。組織所見ではOLG以外にもT細胞やマクロファージ・ミクログリアにもこれらが強く発現していた。また白質においてミエリン構成蛋白の一つであるPLPのin situ hybridizationを行ったところEAEではPLP陽性のOLGが明らかに減少しており、残存しているPLP陽性OLGの約10%が核が濃縮化あるいは断片化といったアポトーシスに特徴的な形態を示していた。このような細胞死が決定されたOLGのほぼ全てに活性型Caspase-3が発現していた。さらにcaspase-11のノックアウトマウスからOLGを取り出しサイトカインに対する感受性をコントロールと比較したところTNF-a,IFN-g,抗Fas抗体のいずれにも有意な低下を認めアポトーシスが生じにくくなっていた。従ってこれらの結果からEAEのある時期においてはOLGがCaspase-11やCaspase-3の関与によりアポトーシスによって脱落すると考えられる。実際にcaspase-11ノックアウトマウスはEAEの感受性が著しく低下し、OLG細胞死と免疫担当細胞の浸潤が抑制されていた。
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