研究概要 |
サイトカインのシグナル伝達におけるJakファミリーキナーゼの重要性は十分理解されているが、その中でTyk2キナーゼは、当初IFNαのシグナル伝達に必須のキナーゼとして同定された。In vivoでのTyk2の役割を明確にするために我々はTyk2欠損マウスを作成し、Tyk2はIFNαの大部分のシグナル伝達に必須ではないことを明らかにした。さらにIFNα以外にその刺激によりTyk2を活性化する抗癌サイトカインとして知られるIL-12のシグナル伝達にTyk2が重要であることも示したが、今回さらにIL-12とならび生体内の抗癌作用に重要なlFNY誘導サイトカインであるIL-18についてTyk2欠損マウスを用いて検討した。IL-18は、Jak-STAT経路ではなく、NF-κBを介する経路でそのシグナルを伝達するが、Tyk2欠損マウス由来脾細胞では、野生型マウスと比べIL-12刺激時に約1/6、IL-18刺激時に約1/3とNK細胞活性が減少していた。また、IL-12,IL-18刺激によるT細胞の増殖にはTyk2の欠損は影響を与えなかったが、IL-12,IL-18刺激によるIFNγの産生は著明に低下していた。野生型マウスでIL-12刺激時にみられるT, NK細胞におけるIL-18レセプターの発現亢進が、Tyk2欠損マウス由来T, NK細胞では見られておらず、このことがJak-STAT経路ではなく、MAPキナーゼ、NF-κBを介する経路をシグナル伝達に用いるIL-18の作用がTyk2の欠損により傷害される機序の一つとして考えられる。 現在、これらサイトカインによる抗癌メカニズム解明に向けてTyk2ノックアウトマウス及び野生型マウス由来脾細胞をIL-12及びIL-18刺激により新たに誘導される遺伝子発現をMicroarray法により解析中であり、同定された新たな遺伝子の解析も進める予定である。
|