HTLV-Iキャリアーから発がんに至る経緯は多段階の遺伝子変異が必要であると考えられている。同じATL患者由来でSCIDマウスで造腫瘍性のある白血病細胞株ED-40515(+)と造腫瘍性のないHTLV-I感染非白血病細胞株SYからそれぞれmRNAを抽出し、約9000種類の遺伝子のcDNAがスポットされたcDNA microarrayによる解析を行ない6個の遺伝子がED-40515(+)でSYと比較して5倍以上の発現が認められた。このうちselenoprotein PとHevinはRT-PCR法にて明らかにSYと比較してED-40515(+)に強い発現が確認され、さらに少なくとも一部のATL患者由来新鮮白血病細胞にも発現が認められた。また、この2つの分子は末梢血リンパ球やPHAで刺激した活性化リンパ球では発現が検出されず、発がんに関与している可能性が示唆された。次にSCIDマウスを用いたATL細胞のin vivo増殖モデルから樹立した白血病細胞株SYK-11L(+)、SYK-11L(-)ともとのin vivoで増殖している腫瘍細胞のIL-2またはIL-15に対する反応性の比較から、ATL細胞の増殖はin vivoとin vitroで異なっていると考えられた。非常に興味あることに、これらの細胞株は造腫瘍性を失っており、もとの腫瘍細胞とSYK-11L(+)を用いてcDNA microarrayによる解析を行ない、もとの腫瘍細胞に強く発現している遺伝子の一部はATL患者由来新鮮白血病細胞にも発現していることを見い出した。これらの遺伝子はATL細胞の腫瘍性増殖に関与している可能性がある。
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