研究概要 |
1.大腸発がん高感受性・肺発がん低感受性のLECラットと大腸発がん低感受性・肺発がん高感受性のF344ラットを用いて253匹の雄(F344xLEC)F2ラットを作製し,N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)の腹腔内投与,およびアゾキシメタン(AOM)の皮下注射により小・大腸腫瘍,肺腫瘍を誘発した。LECとF344ラットで形態が異なっている肝および胸腺を組織学的に検索し,それぞれLEC型とF344型に分けた。腫瘍個数,大きさ,組織型を表現型マーカーにして,個々のラット尾から抽出したDNAを用いてQTL連鎖解析を行い,LECラットの発がん感受性抵抗性に関与する遺伝子座の同定を試みている。これまでの結果では,QTLは肝障害・肝発がんに関与する16番染色体上のAtp7b遺伝子,T細胞分化異常に関与する1番染色体上のthid遺伝子には連鎖していないようである。最終結果が出るまでにはもう少し時間を要する。2.LECラットの誘発大腸発がん高感受性の原因をこのラットの特徴から解析するために,大腸粘膜の組織学的所見,BrdU標識率,FACScanによる末梢血リンパ球の解析を行った。いずれの週齢においても遠位大腸の粘膜固有層における炎症細胞浸潤はF344より強かった。遠位大腸腺窩上皮のBrdU標識率は若年期に有意な上昇がみられたが(LECラットは平均12.3%,F344ラットは7.6%),この傾向はその後も持続した。ヘルパーT細胞は特に若年期に減少が著しかった(8週齢のCD4/CD8比はLECラツトは0.48,F344ラットは1.95)。これらの結果はLECラットの大腸発がんに大腸炎が関与していることを示唆している。以上,QTL解析とLECラットの特徴の両面から発がん感受性/抵抗性の原因を追究している。
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