研究概要 |
21日齢雄F344ラットにDDTを0.5,1.0,2.0,5.0,20,100,500ppmの用量で16週間混餌投与し、肝前がん病変のマーカーGST-P陽性細胞巣の検索を行った。また、薬物代謝酵素P450CYP2B1、CYP3A2の各蛋白量及び8-OHdG修復酵素であるOGO1の発現量を検討した。更に低用量(0.005,0.01 0.1,0.2,0.5ppm)を同様の試験系で投与し、上記検査に加えP450の負の制御に関わるIL-1β、TNF-αの各受容体IL-1R1、TNFR1、その制御に伴い誘導されるiNOSの各発現量、加えて8-OHdG量について検討した。同低用量域にて、BrdU標識率、ODC活性、cyclinD1、p38MAPKリン酸化レベルの検討も行った。その結果、GST-P陽性細胞巣数は20ppm以上で用量相関性的に有意な増加を示し、0.01ppm以下では対照群に比べ減少傾向を示した。CYP3A2も0.01ppm以下で減少傾向を示し、IL-1R1、TNFR1の各mRNAはCYP3A2の発現動態と逆相関し、iNOS mRNAもこれらと同調した。8-OHdG量は0.005ppmで対照群と比較し有意な減少を示した。OGG1 mRNAは低用量域で著変なく、BrdU標識率、cyclinD1、p38MAPKにも変化はなかった。ODC活性は0.5ppm以下で用量相関的な減少を示した。以上、低用量のDDTはGST-P陽性細胞巣を減少させ(hormesis現象)、CYP3A2の発現量はこれと相関した。IL-1R1、TNFR1及びiNOSmRNAの発現動態からこれらが低用量域でのCYP3A2の制御に関与している可能性が考えられたが、肝細胞増殖性に変化はなかった。一方、低用量域で8-OHdGの有意な減少が認められ、GST-P陽性細胞巣の減少と強く関連していた。
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