研究概要 |
ニワトリ胚から単離された、VEGFファミリーの一つであるRIGF(Retinoicacid-Induced Growth Factor)の胚発生過程における機能を解析した。RIGFは、申請者らがニワトリ胚から単離した、VEGFファミリーに属する細胞増殖因子である。名前が表すとおり、レチノイン酸によってニワトリ胚に過剰に誘導される遺伝子として単離した。マウスのVEGF-dと最も高い相同性を持つことから、両者がそれぞれの種の相同分子である可能性もある。 まずin situ hybridization法によりRIGFの発現部位の詳細を検討した。さらに、マウスのFIGFの発現パターンを解析比較し、両者の発現状態の違いを明確にし、上述のRIGFとFIGFが相同分子である可能性を否定する結果を得た。またRIGFとレチノイン酸およびshhとの関係について、in vivoにおける局所投与実験系を用いてRIGFがレチノイン酸あるいはshhのいずれによっても誘導されることを見出し、RIGFがこれらの因子の下流に存在する機能分子である可能性を示した。さらにRCASレトロウイルスによるRIGFの強制発現系を確立し、RIGFの過剰発現による胚発生への影響を調べた。その結果、RIGFの過剰発現は著しい水腫及び皮下出血を引き起こすことがわかった。このことはRIGFがニワトリ胚発生において血管形成および浸透圧調整に機能している可能性を示唆している。 また、四肢を栄養する血管網のパターン形成を理解する基盤作りとして、手足の形成における様々な分泌因子の寄与とくにFGFファミリーの機能を解析(Akiba et al.,2001)し、また手と足の原基を移植する実験系を構築(Saito et al.,2002)し、どのようにして血管が四肢に進入し手足の中に血管網が形成されていくかを調べる基礎を作った。
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