研究課題
特定領域研究
ホルボールエステル発がんプロモーターの標的分子であるPKCの中で、上皮基底層で発現が高いPKCα、分化した細胞で発現するPKCη、さらに全層で発現するPKCζに注目し、遺伝子破壊マウスを用いて過形成誘導とがん化の機構について検討した。PKCα遺伝子破壊マウスでは、表皮基底層での同調的DNA合成誘導が低下し、過形成が抑制された。同時にTGF-αとHB-EGFの発現が顕著に減少した。角化細胞の増殖に必須なこれらEGFレセプターリガンドの供給にPKCαの関与が示唆された。一方腫瘍形成にはPKCαが抑制的に働く。全ての細胞でPKCαが発現することから、マウス胎児由来繊維芽細胞(MEF)を用いて遺伝子安定性への関与を検討した。PKCα欠損MEFは早期に静止期に入り、その後活発に増殖する細胞集団の出現が顕著に早かった。PKCα欠損MEFが容易に無限増殖能を獲得しやすい性質をもつことを示している。また、PKCα欠損MEFでは、N-methyl-N-nitrosoguanidine処理によるDNA断片化が顕著に抑制され、アポトーシスが生じにくなった。DNA修復に関与するMutSαの構成成分MSH6の核集積がPKCα欠損MEFでは抑制された。PKCαは特異的にMSH6の局在を制御し、MutSαの機能を調節する可能性を示し、DNA修復を含めた遺伝子安定性の機構との関連性がみられた。PKCηは表皮過形成と腫瘍発生に抑制的に働く。三次元培養でPKCη欠損角化細胞の異常な重層化を示す。PKCη欠損細胞では、IL-1βの転写が制御によるものである。PKCζ遺伝子破壊マウスは高頻度で腫瘍が発生したが、過形成の異常はみられなかった。PKC分子種間で上皮組織の増殖制御に役割のあることを示し、表皮過形成誘導と腫瘍発生との間には相関性はみとめられなかった。
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Cancer Research (発表予定)