研究概要 |
ユビキチン類似蛋白であるSUMO-1はRanGAP1,p53,PML蛋白などに結合する蛋白質モデイファイアーである。SUMO-1はユビキチン経路と同様に活性化酵素(E1)、結合酵素(E2)を経て標的蛋白へと結合するが、基質に最も近いE3についてはその存在自体、不明であった。我々は出芽酵母Smt3が増殖に必須であり、機能的にもSUM0-1ホモログであること、細包質分裂面に存在するCdc3に結合することを初めて見い出した。本研究ではユビキチン類似蛋白の結合制御機構を分子遺伝学的に解析し、その生物学的意義を考察することを目的とした。2-hybrid system法で出芽酵母Smt3の結合蛋白を検索し、Nfi1を単離したが、遺伝子破壊株でのCdc3のSUMO1化に変化はなかった。これに対し、Nfi1と相同配列を持つsiz1/Ull1遺伝仔破壊株でのcdc3のSUMO1化は消失していた。また、Siz1/Ull1はcdc3と共局在した。Siz1/Ull1はUbc9や、cdc3と共沈するばかりでなく、大腸菌で調製した蛋白同士も結合した。 Siz1/Ull1にはRINGフィンガーモチーフと類似領域を持つPIAsファミリーの一員である。このドメインのシステインをセリンに置換すると活性を失った。次に、SUMO1経路における各因子を大腸菌や、バキュロのシステムで調製し、in vitro系を開発した。ATP依存的にSUMO1がCdc3に、結合し、その反応はNEMによって阻害された。これらのことから、Siz1/Ull1はSUMO1経路におけるE3(SUMO1リガーゼ)であると結論した。安田らは我々と同時期に、PIAS1がp53のSUMO1リガーゼであると発表している。Smt3経路は増殖にとって必須であり、新規標的蛋白とE3を同定し、制御機構を解明することは今後の重要な課題である。
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