研究概要 |
本研究では、培養腫瘍細胞に対する殺細胞活性およびサイクリン依存性キナーゼ4(cdk4)阻害活性を指標にして、海洋生物より活性成分の検索を行った結果、種々の活性物質を見い出した。 1).新規ブロモチロシンアルカロイドの単離とcdk4阻害作用:沖縄産の海綿Suberea sp.の抽出物よりSuberedamine AとBを単離し、構造を帰属した。Suberedamie AとBには、L1210細胞(IC_<50>8.0、8.6μg/mL)およびKB細胞(IC_<50>9.0、>10μg/mL)に対する細胞毒性が認められた。cdk4に対する阻害作用は現在検討中である。 2).新規マクロリドの単離と細胞毒性:沖縄産ヒラムシの体内より分離した渦鞭毛藻Amphidinium sp.を大量培養し、その抽出物より19および12員環マクロリドAmphidinolide T1〜T5およびWを単離し、それらの化学構造を明らかにした。Amphidinolide Wは、L1210細胞(IC_<50> 3.9μg/mL)に対して殺細胞活性が認められた。それに対してAmphidinolide T1〜T5は、L1210細胞(IC_<50> 7.0〜18μg/mL)に対して弱い細胞毒性を示した。 3).Amphidinolide GおよびHの構造活性相関:沖縄産ヒラムシの体内より分離した渦鞭毛藻Amphidinium sp.の抽出物よりAmphidinolide GおよびHの新規類縁化合物7種を単離し、それらの構造を帰属した。一方、Amphidinolide H(IC_<50> 0.0005μg/mL)について、各種誘導化反応を行い8種の化合物を調製した。それらについて、培養腫瘍細胞L1210とKBに対する殺細胞活性を調べた結果、26位水酸基を保護した化合物および22位の立体異性体では、細胞毒性にさほど変化がなかったのに対して、27員環ラクトンでは、約1/50、16,18-エピ体、20位の還元体、ジエン部のパーオキシド体では1/300と細胞毒性の顕著な低下が認められ、アリルエポキシド部分の6,7-ジヒドロ体では1/1000、エポキシド環の開環体では殺細胞活性が認められなかった。このことからAmphidinolide Hの細胞毒性発現にはアリルエポキシドの存在が必須であり、エスシスジエン部や20位ケトンの存在、16、18位の立体化学、ラクトン環サイズが細胞毒性に影響を与えているものと推定された。
|