研究概要 |
申請者は最近単離した新規有機アニオントランスポーターLST-1に引き続きLST-2を世界に先駆けて単離した。LST-2は正常ヒト肝臓のみに弱く発現していたが胃癌、大腸癌、膵臓癌において多量に発現していた。各種発現系の結果からLST-2はMTXを飽和的にかつ濃度依存的に輸送し培養細胞へのLST-2遺伝子の導入は細胞のMTXに対する感受性を高めることが明らかとなった。本研究ではアデノウイルスを用いたLST-2強制発現細胞を作製し、その発現細胞に取り込まれる蛍光標識物質の蛍光強度に対する各種薬物の阻害効率を指標に消化器固形癌指向性薬物の探索を目的とする。我々はアデノウイルスを用いたトランスポーターの強制発現系を樹立し、蛍光マイクロタイタープレートを用いてLST-2で輸送される蛍光基質の取り込みの抑制を指標とした消化器固形癌指向性薬物のスクリーニング系の開発を行った。動物細胞で働くCAGプロモーターを含むcosmid vector, pAxCAwtにLST-1,LST-2c DNAの翻訳領域を挿入、アデノウイルスゲノムDNAと共にリン酸カルシウム法でHEK293細胞にcotransfectionし、LST-1,LST-2組み換えアデノウイルス(AdLST-1,AdLST-2)を得た。AdLST-1,AdLST-2を各種細胞株に感染させ、放射線標識体の取り込み実験を行った。AdLST-1,AdLST-2を感染させたHepG2,PLC/PRF/5,HT17で[3H]-タウロコール酸(TCA)の取り込みを検討したところ、コントロールに対して最大36.7倍の有意な取り込みが認められた。AdLST-1,AdLST-2の感染により発現したLST-1及びLST-2は共に濃度依存的、飽和的にTCAを取り込んだ。また、ケノデオキシコール酸(CDCA)はLST-2によって濃度依存的飽和的に取り込まれ、そのKm値は0.66+0.11μMであり非常に親和性の高い基質であることがわかり、機能的にも効果的に細胞にLST-2を導入することが可能になった。
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