研究概要 |
ヒトのインターロイキン6(interleukin-6,IL-6)はとその受容体sIL-6Rと結合して細胞に作用する本研究では,IL-6と結合するsIL-6Rの2つのドメイン領域であるsIL-6Rbd単体,そしてIL-6とsIL-6Rの複合体の三次元構造をX線結晶構造解析によって解明することを目的としている。本研究によって三次元構造の知見が得られると,抗癌化学療法と放射線療法に伴う血小板減少症の治療薬の開発が大きく進展することになる。 研究では,まず,これらの蛋白質の発現系と精製法を改良した。ヒトIL-6については,ゲノムDNAから大腸菌を用いる大量発現系を構築し,精製法も確立した。ヒトsIL-6R受容体の発現系では,sIL-6Rbdタンパク質が糖鎖を含むことから,メタノール資化酵母を用いた。発現量の向上と精製法の改善,エンドグリコシダーゼ酵素処理による糖鎖部位の均一な短鎖化を経て,結晶化用サンプルを調製した。 調製したIL-6とsIL-6Rbdを混合して複合体形成を調べたところ,期待したとおりの安定な複合体が得られ。sIL-6Rbdについては束状に結晶粒が集合した多結晶が得られたが,X線の回折能はいまだ不十分であった。過剰産生されたIL-6がsIL-6Rと結合することによってリューマチ疾患は発症し,この結合を阻害する薬物は疾患の治療薬となる。そこで,単体よりはむしろ複合体のX線解析がこれらタンパク質分子の結合に関する構造知見を直接的に与えること,複合体の試料が大量に得られるようになったことから,両者をより大量に得て精製し,現在はその結晶化を進めている。結晶が得られるならば,結晶構造が既に報告されているIL-6をサーチモデルとする分子置換法を用いれば,直ちにX線解析が可能となることから,今後も複合体結晶の調製を精力的に展開させる計画である。
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