研究課題
特定領域研究
本研究は、I型インスリン様増殖因子受容体(IGF-IR)の放射線抵抗性シグナル伝達機構を解明し、IGF-IRが放射線増感のための標的分子となりうるかを検討するものである。これまでに実施したIGF-IR遺伝子ノックアウトマウス由来胎児線維芽細胞を用いた我々の研究から、IGF-IR/MEK/ERK経路が放射線抵抗性に特に重要であることがわかってきた。本年度は、ヒト腫瘍細胞において、この経路がどのような性質をもっているかについて研究を進めた。ヒト口腔癌細胞株(Ca9-22)は、EGFRを過剰発現する細胞であるが、IGF-IによりERKとAktが活性化された。EGFR特異的阻害剤であるAG1478によって、Aktは影響を受けないが、ERKはほぼ完全に抑制されることがわかった。さらに様々な方向からEGFRトランスアクチベーションの可能性を検討した所、全く起こらないことが判明し、しかしながらEGFRの基底レベルの活性は必要であった。次に、EGFRの下流経路においてEGFRの基底レベルの活性を必要とするキナーゼを調べると、Rasには不要でc-Rafに必要であることが判明した。これらの結果から、全く新しいIGF-IRとEGFRクロストーク機構が存在することがわかり、放射線増感戦略を構築する上でも、特異的阻害剤の使用が予想外のクロストークを介して意外な効果を及ぼす可能性について十分な注意を要すると考えられた。現在我々は、IGF-IRの機能を可溶型IGF-IRによって抑制するために、大腸菌および昆虫細胞に可溶型IGF-IRを発現、精製し、それをヌードマウス移植ヒト固形腫瘍に投与して、放射線との併用効果を調べている。
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