研究概要 |
ヒトテロメア配列へのナフチリジンダイマーの結合とそれに伴う構造変化の解析を行った。 ヒトテロメア配列はグアニンクアドラプレックスを形成している場合が多いが、ナフチリジンダイマーを添加することによる構造変化の有無をCDスペクトルを測定することにより、観察した。また、吸収スペクトル変化からテロメア配列への結合定数を見積もった。CDスペクトルの測定には、既にクアドラプレックスを形成することが報告されている配列を用いた。d(AGG GTT AGG GTT AGG GTT AGG G)は、10mM Phosphate Buffer(pH7.0)、100mM NaCl、5uMの濃度において、antiparallel G-クアドラプレックスを形成していることが報告されている。(Structure 1993,1,263.;PDB ID 143D)この溶液に、ナフチリジンダイマーを濃度を変えて加えたときのCDスペクトル変化を記録した。ナフチリジンダイマーを加えていない状態では、報告通りアンチパラレル型のグアニンクアドラプレックス構造を取っているが、ナフチリジンを加えるに従い違う構造に変化していくことが示された。スペクトル変化には明瞭な等吸収点が認められることから、1:1の構造変化であることが明らかである。また、350nm付近に強い誘起CDスペクトルが観測されることから、ナフチリジンダイマーはDNAにより形成される不斉環境内に存在していることが強く示唆された。この結果から、ナフチリジンダイマーはG-クアドラプレックスを新たな構造へ変化させることが明らかとなった。この「テロメア-ナフチリジンダイマー」複合体形成における結合定数と結合モル比を求めるために、同じ実験を吸収スペクトルで追跡した。その結果、ナフチリジンダイマーのヒトテロメアへの結合は解離定数で2.4uMであること、TTAGGGTTAGGGTTAGGGにつき約4分子のナフチリジンダイマーが結合していることが示唆された。これらの結果から、現時点でのテロメア-ナフチリジンダイマー複合体構造として、テロメアがヘアピン構造をとりGGG部分がG-Gミスマッチを形成し、そのG-Gミスマッチをナフチリジンダイマーが安定化しているのではないかと予想している。
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