研究課題
特定領域研究
本研究では、癌におけるアポトーシス失活に関与する腫瘍選択的因子を検索し、これを阻害する化合物やアポトーシス変異をバイパスする薬剤の検索を試みる。本年度は以下のことを明かにした。1.ヒト固形がんでのp53変異および低アポトソーム活性の相補的発現や、化学療法耐性であるp53変異がんでその下流のアポトソーム系の亢進を見出している。すなわち、p53変異をバイパスし下流のアポトソームをより直接的に活性化する細胞死シグナル伝達系は、p53変異がんに対する有効な細胞死誘導法となりうる。相関解析を行ない、アポトソーム活性レベルに相関して細胞死を誘導する化合物群を抽出した。さらに、p53変異に依存せずに下流のアポトソームをより直接的に活性化する薬剤としてAcyl-CoA Synthetase(ACS)阻害化合物Triacsin cを同定した。Triacsin cは、p53変異がんに対して選択的な細胞死誘導作用を示した。Triacsin c処理によって、ACS活性の強い低下および、p53発現誘導を介さないアポトソーム依存性のカスパーゼ活性化が誘導されたが、Triacsin c耐性なACS5の過剰発現はこれらの効果をすべて抑制した。さらに、ACSはミトコンドリア特異的リン脂質カルジオリピン合成を制御することによってミトコンドリアからのチトクロムc放出制御に直接的に関わることを示した。以上より、化学療法耐性であるp53変異がんの新たな分子標的としてACSを同定した。2.Hsp27がホルモン不応性の前立腺癌において高発現していると共に、メチルグリオキサールによるHsp27の修飾がこれらの細胞内において生じていることを見い出した。複数の特異的なsiRNAをデザインし、これらを用いたノックダウンにより、メチルグリオキサール修飾化Hsp27が、前立腺癌のホルモン非依存性増殖に関わることを示した。
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Oncogene 24
ページ: 1774-1787