研究概要 |
本研究の目的は定量的リアルタイムPCR法を用いた遺伝子診断法により微小転移を高感度に検出し、現在唯一利用可能な化学療法を含め、微小転移を標的とする効果的な治療法を確立することにより、胃癌患者の生存率の改善を図ることである。これに従い、本年度は以下の諸点を明らかにした。 1 既に申請者らが200例以上の症例を用いて行ったRetrospective studyによりその意義が確立しているCEAを指標とした定量的リアルタイムRT-PCR法(Kodera, Nakanishi, et al., Ann. Surg. in press)をヒト胃癌の腹腔洗浄細胞診に代わりうる高感度検出法として実用化し、その臨床的有用性を検証するためにProspective study(厚生労働省認可の高度先進医療)を開始した。これまでのところ約50例の症例の収集をおこない、平均1年のFollow up期間で予後の判明している30例中12例が細胞診陰性、リアルタイムRT-PCR法陽性であり、このうち3例に腹膜再発を認めており、期待にそう結果が得られつつある。また多施設共同研究のためのリアルタイムRT-PCR法の共通プロトコールの作成をおこなった。 2 本法を胃癌のリンパ節微小転移、大腸癌の末梢血液中癌細胞の検出にも応用、細胞組織学的診断や免疫染色に比べ高感度な検出法であることを証明し、Molecular stagingの可能性を示した。またサイトケラチン20(CK20)を指標とするリアルタイムRT-PCR法を用いた尿中移行上皮癌細胞に対する定量的検出法も確立し、細胞診に比べ高感度でしかも非侵襲的であり有用な補助診断法となりうる可能性を示した(Inoue, Nakanishi et al., J. Urol. 2001)。 3 GFP(緑色螢光タンパク)遺伝子導入ヒト胃癌の腹膜微小転移モデルを作成し、微小転移の5-FU系抗癌剤に対する化学感受性を検討した。その結果、微小転移は進行した腹膜転移に比べ化学療法感受性が高く、進行した転移と異なり治療により生存率が改善されうることを示した。
|