研究課題/領域番号 |
13220001
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研究種目 |
特定領域研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浅香 正博 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10113507)
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研究分担者 |
加藤 元嗣 北海道大学, 医学部・附属病院, 助教授 (60271673)
杉山 敏郎 北海道大学, 医学部・附属病院, 助教授 (00196768)
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研究期間 (年度) |
2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2001年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | H.pylori / CagA抗体 / H.pylori抗体 / 萎縮性胃炎 / 腸上皮化生 / 胃癌 |
研究概要 |
Helicobacter pylori(H.pylori)抗体・サイトトキンシン測定:わが国の胃癌発生多発地域である新潟県と発生頻度の低い沖縄県を中心に年齢、性をマッチさせた無症候者を20代、40代、60代よりそれぞれ200例ずつ血清を集め、北大にて一括測定を行った。H.pylori抗体の陽性率には、両地域で有意差は見られなかった。新潟のCagA抗体陽性率が沖縄より高い傾向を示したが、VacA抗体の陽性率には有意差は認められなかった。H.pylori陽性と陰性者による胃粘膜萎縮および腸上皮化生の発生の差異に関する検討:無症候者のうち、内視鏡下で生検を行った6578例につきH.pylori抗体の測定を行い、H.pylori抗体陽性者と陰性者に分けて、内視鏡下で胃粘膜を観察し、H.pyloriの感染の有無による胃病変の進展状況の比較を行った。H.pylori抗体陽性例では、20歳代でも60%に萎縮が認められ、30歳以降では85%に胃粘膜萎縮を認めた。これに対してH.pylori抗体陽性者では20代で2%、30代で4%と極めて低く、60歳以降でも22%であり、抗体陽性者に比して明らかに低い傾向を示した。H.pylori感染と腸上皮化生の発生との関わりを検討したところ、H.pylori抗体陽性例では、20代で10%に腸上皮化生が認められ、30代で27%、40代で34%、50代で48%、60歳以降で57%と年代を追う毎に腸上皮化生の頻度は増加した。これに対して、H.pylori抗体陰性者では、20代、30代で1%、40代、50代で9%、60歳以降でも20%であり、抗体陽性者に比して腸上皮化生の頻度は明らかに低い傾向を示した。 この大規模研究によりわが国のH.pylori感染と萎縮性胃炎と腸上皮化生の発生の関わりは必要かつ十分な条件を満足する事が明らかになった。すなわち日本人の萎縮性胃炎と腸上皮化生の成因の大半はH.pylori感染に基づくことが証明されたのである。H.pylori感染の胃粘膜への影響を一言で語ると、それは慢性活動性胃炎という炎症細胞浸潤を伴う永続的な組織学的胃炎を惹起することである。この感染が持続することにより、わが国では最終的に萎縮性胃炎に進展する頻度は80%を越えることが明らかになってきた。この数値は欧米諸国から見ると著明に高い値である。すなわち目本人の胃粘膜は欧米人に比し、H.pylori感染の影響を受けやすく最終的に胃粘膜萎縮を起こしやすい素地をもたらしている可能性が存在する。
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