研究概要 |
1.実態調査 著作権保護とデジタル著作物市場発展のための方策として、次の三方式が採用されている:(1)技術方式:複製防止技術の高度化(暗号化)、不正複製行為の監視追跡技術(電子透かし)、(2)市場方式:コンテンツ配信ビジネス(通常契約)、著作権管理ビジネス(信託契約、委任契約)、(3)制度方式:不正複製行為に対する罰則の強化、私的複製のための補償金(事前課金)制度。 2.理論化 デジタル著作権管理(DRM)は、複製容易かつ転送可能なデジタル情報財に複製の障害となる付加処理を行い、デジタル著作物として利益を得る権利を管理する仕組みである。本研究ではデジタル著作権管理システム(DRMS)を「DRMを実現するためのシステム(特定の仕方で関連しあう諸要素の集合体)」と定義する。DRMSは社会制度、市場取引形態、著作権保護技術を含んだ広義の概念である。DRMSのフレームワークにおける利害関係者の安定的選好および合理的選択による制度・市場・技術の方式間における均衡状態の多様性とその解釈について、本研究は論じるものとする。 3.シミュレーションモデリング方針と今後の予定 DRMSフレームワークでは(著作ルール、所有ルールによる)契約的事象、(文化伝播ルール、集団化ルールによる)組織的事象、(罰則ルール、賦課金ルールによる)法律的事象が発生するものと考えられる。本研究は以下の方針に基づき、さらに研究を進めていく。 (1)DRMSにおける{技術方式,市場方式,制度方式}の三項関係を重視したエージェントベースドモデリングを試みる。 (2)内部ルールを持つエージェント間の相互作用により、お互いの属性が変化しない状態(均衡状態)の移行パターンを分析する。 (3)複数の均衡状態を現出可能な制度の多様性と見なし、積極的な評価を行う。 (4)均衡状態パターンを分析し、社会事象への対応づけ、さらに制度設計のための解釈を行う。
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