平成13年度は、以下の2つの成果を得た。 ITSシステムアーキテクチャモデルを実例として、記述面の検証を行った。 ITSシステムアーキテクチャモデルとはITS(高度道路交通システム)で提供される45個のサービスについて、それらの実現方式をUMLで記述したモデルである。このモデルでは、クラスダイアグラムを用いて、複数の抽象度、及び、複数の視点から記述してある。そこで、これら複数のダイアグラム間の整合性について検討を行った。そして、ダイアグラム間の整合性を定義し、計算機を用いて検証を行った。その結果、多数の不整合を発見することに成功した。検証した整合性はクラスと関連の出現関係に関する単純なものである。大規模システム開発の場合、構築するモデルが巨大なものとなるため、このような単純な検証でもかなりの誤りを発見できることがわかった。また、単純な整合性は、モデル構築者からも軽視されがちであり、計算機による機械的な検証が有効に働いた。 OCLからSQLへの変換手法を提案した。 ITSシステムアーキテクチャモデルを対象とした整合性に関する検討からわかるように、大規模システム開発では記述面の整合性の検証が有効に働く。そこで、このような記述面の整合性検証を行うための枠組みとして、関係データベースに格納されたモデルを検証する手法を提案した。この手法では、構築したモデルを関係データベースに格納し、モデル間の整合性をOCLで記述する。そして、OCLを対応するSQLに変換し、関係データベースに発行することにより検証を行う。平成13年度は、この手法の基礎となる技術である、OCLからSQLへの変換手法を提案した。
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