研究概要 |
本年度は、電子商取引を支援するためのエージェント間の協調・交渉機構と、その応用システムの実現を目指した。具体的には,主に以下の3点を行った.(a)電子商取引における売り手を支援するために、売り手エージェントの協調機構を提案した。本協調機構では、2エージェント間の個人合理性に基づく割り当てを保証する。また、本協調機構に基づき、P2Pに基づく電子商取引支援モデルを提案した。(b)買い手の支援のために、エージェント間の協調的入札機構に基づく複数オークション入札支援システムBiddingBotを試作し、その有用性を実験を通して示した。(c)電子商取引支援のためのエージェント間の交渉機構の理論的な設計を行った。まず、取引される財の質に注目し、質を見極められる専門家とそうでない非専門家が存在する状況(自然の選択に関する非対称情報が存在する状況)で、真の申告が支配戦略となるようなオークションメカニズムを提案した。また、指名入札に注目し、買い手が売り手を指名した上で売り手がオークションを行うメカニズムの談合に対する頑健性等を示した。 以上をまとめ、3本の雑誌論文(和文1、欧文2)に採録済みであり、3つの関連国際会議で発表、または発表予定である。その中でも、特に(a)の成果の一部は、国際会議PAIS2001での発表論文の質の高さが評価され雑誌論文(欧文)としてセレクトされた。また、(c)の成果の一部は、国際的に評価の高いAAMAS2002に受理された。 本研究の成果は以下の3点である。(1)電子商取引支援のための売り手のエージェント間交渉における協調方式を提案した。(2)買い手の電子商取引を支援するための複数オークション入札支援システムを試作し、その有用性を実験により示した。(3)自然の選択に関する非対称情報が存在する状況でのオークションメカニズム、および、指名入札に基づくオークシヨンメカニズムの理論的な分析を行った。
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