研究概要 |
近年の計算機技術とネットワーク技術に発展に伴い,Gridなどのように複数台のホスト計算機がネットワークを介して並列計算を行うための基盤技術の開発が盛んに行われている.このような基盤技術の一つとして,並列計算に利用する大量データを効率的に扱うデータ管理技術の重要性が非常に高い.そこで本研究課題では,Gridなどの並列計算を行う分散システムにおいて,広帯域な放送通信を用いてデータ配信・管理を行うことで,並列計算のスループットおよび応答時間を短縮することを目的として研究を行った.具体的には,放送されるデータ項目の特性と,システムの特性を考慮して,以下の二つの観点から研究を推進した. (1)データ項目間の相関性を考慮した放送スケジューリング・キャッシング 放送されるデータ間には,複数のデータ項目をまとめてアクセスすることが多いといったように,データ項目間に相関性が存在することが一般的である.そこで,データ項目間の相関性を考慮した放送サーバにおける放送プログラムのスケジューリング方式,および,クライアントにおけるデータ項目のキャッシング方式を考案した.シミュレーション実験によって考案方式の有効性を確認した. (2)アドホックネットワーク内の協調キャッシング モバイルコンピューテイング環境の普及に伴い,移動体自身が通信パケットを中継して,移動体のみのネットワークを構築するアドホックネットワークの注目が高まっている.放送を受信している複数の移動体がアドホックネットワークを構築する環境では,これらの移動体で協調して放送データ項目をキャッシュすることで,アクセスの平均応答時間をさらに短縮できるものと考えられる.そこで,各データ項目の放送時に,各移動体のデータ項目アクセス頻度およびアドホックネットワークのトポロジを考慮してデータ項目をキャッシュする手法を考案した.
|