研究実施計画に従い、(1)ネットワーク移動性をもつソフトウェアコンポーネントの設計と実装と(2)コンポーネント合成手法の提案を行った。(1)は、一つのコンポーネントが一つのモバイルェージェントに対応づけるものであり、これは研究代表者が過去に設計・実装した階層型モバイルエージェントシステム(MobileSpaces)を拡張することにより実現した。この結果、各コンポーネントはJava言語によりプログラミングされた能動的な計算実体となると同時に、(OSやハードウェアが相違していても)コンピュータ間を移動できるようになる。この実装・評価にモバイルエージェントが複合ドキュメントを実現する上での有用な基盤となることが証明された。また、コンポーネントの移動技術として、人やものなどの物理空間との連動させる方法を提案し、これの基礎実験を通じて分散システムと物理世界を融合させる技術として重要であることが示された。 次に(2)はコンポーネントの合成関係として、コンポーネントの階層関係を基礎とする方法を提案した。コンポーネントは移動性をもつため、OLE/COMやOpenDocなどの既存技術のコンポーネント結合手法は利用できないが、この階層化を拡張することにより様々な結合関係が実現できることがわかった。具体的には、この含有関係をすべてのコンポーネントが最初からもっている基本結合として導入し、次に含有以外のすべての結合関係は、その結合関係を内包するコンポーネント間に実現する特別なコンポーネントとして設計した。例えば集約(Aggregation)による結合では、集約関係となる複数のコンポーネントを含有するコンポーネントとして導入される。これは各コンポーネントをグルーブ化するとともに、外部的にはコンポジション、つまり一つのコンポーネントとして扱えるようにしたものとなった。
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