企業対消費者間の電子商取引サービスと行政対住民間の電子商取引サービスをシームレスに電子情報化するための技術開発動向と制度整備状況に関して、アメリカ、ヨーロッパ連合、オーストラリア等の現状を調査研究した。特に、行政サービスの情報化推進の先端的事例として、韓国の制度整備状況を現地にてヒアリング調査した。 その結果、わが国における住民基本台帳カードとは異なり、中央銀行である韓国銀行が監督し、中央銀行に付属する金融決済院が情報流通を管理するような、統一型の電子マネーと一体化した住民カードを発行し、これを交通などの基礎分野だけでなく、医療・介護・保険・年金といった高度サービスを含む国民生活の全ての領域におい活用する計画について、詳細な情報を収集した。 さらに、大韓民国では多機能ICカードの開発導入といった技術的側面だけでなく、個人信用情報保護法の改正などを重ねて、とりわけ医療・介護・保険・年金などのハイセンシティブ情報を取り扱う分野において、国民が安心して先端的な情報サービスを受けられるよう、制度整備の面においても情報化対策が進展していることが明らかとなった。また、こうした仕組みを活用すると、消費者対消費者の電子商取引サービスに関しても、制度的担保の上で安全に推進できることが明らかとなった。 これらの知見をまとめて広く知らしめるために、『サイバー社会の商取引:コマース&マネーの法と経済』を発刊した。今後はこれまでの研究成果を発展させて、大韓民国の先行実施事例など各国の事例を参考としながら、これらと同様の仕組みを日本において導入する際の制度的課題や運用上の問題点など実証的に明らかにすべく、調査成果の整理をさらに進めているところである。
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