本年度は米国のVREに存在する主要な2種類の高頻度接合伝達性ゲンタマイシン耐性プラスミドと、我が国のVREから分離された高頻度接合伝達性プラスミドの分子遺伝学的研究を行い、以下の成果を得た。 A.ゲンタマイシン耐性高頻度接合伝達性プラスミドの解析 1)米国のE. faecium VREから5種類の高頻度接合伝達性ゲンタマイシン高度耐性プラスミド(A〜Eタイプ)を単離した。接合伝達性及びDNA相同性等の解析の結果、これらは最近我々が報告した、新たな高頻度接合伝達性ゲンタマイシン耐性プラスミドpMG1と類似のプラスミドであった。最も多く存在したA、BタイプについてトランスポゾンTn9171acを用いた変異株を各々約1000個作製した。伝達実験の結果、数十個の非伝達性変異プラスミドが得られた。現在これらの変異株について遺伝学的な解析を行っている。 2)共存する非伝達性バンコマイシン耐性プラスミドへの影響 実験的に、ゲンタマイシン耐性伝達性プラスミドは非伝達性バンコマイシンプラスミドpIP816を固形培地上で伝達させた。この機構はプラスミドの可動化と、2つのプラスミドの融合による伝達が関与していた。 3)共存する低頻度伝達性バンコマイシン耐性プラスミドの伝達性への影響 米国のE. faecium VREから、固形培地上で伝達可能なバンコマイシン耐性プラスミドを複数単離した。ゲンタマイシン耐性プラスミドが一部のバンコマイシン耐性プラスミドの伝達頻度を高めることを実験的に示した。 B.日本のVREから分離された高頻度接合伝達性プラスミドの解析 日本国内で分離されたE. faecium VREから高頻度接合伝達性プラスミドを3種類(A〜Cタイプ)単離した。これらはいずれもpMG1と類似のプラスミドであった。各々のプラスミドの制限酵素地図を決定したところ(64〜68kb)、それらは構造が一部異なるが、互いに類似していた。Aタイプのプラスミドを用い、トランスポゾンTn917lacによる挿入変異プラスミドを約1000個作製し、45個の伝達性変異プラスミドを得た。それらのトランスポゾンの挿入部位を解析した結果、プラスミド上の約3分の2以上の領域が伝達に関与していると考えられた。この領域を含む一部の塩基配列を決定し、変異株についての遺伝学的解析を行っている。
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