本研究は、プラス鎖RNAウイルスの代表例であるアルファウイルス属のサギヤマウイルス(SAGV)とRNA干渉経路の存在が実験的に証明されているショウジョウバエ未熟胚由来S2細胞を用い、アルファウイルス感染S2細胞内での転写後ジーンサイレンシング・PTGS回避機構を解明することを目的として行った。今年度の研究成果の概要は以下の通りである。SAGVをS2細胞に接種し25℃で培養し、BHK21細胞を用いてウイルス増殖を解析した。その結果、培養開始12時間後にタイターの上昇が検出され、48時間後に10e+8pfu/ml近くまで達した。SAGVの構造タンパク質遺伝子をGFP遺伝子と置き換えたレプリコンRNAと非増殖型ヘルパーRNAから構成されたGFP発現性疑似感染性粒子をS2細胞に接種し25℃で培養した結果、培養開始6時間後には蛍光の発色が観察された。SAGV感染S2細胞は細胞変性を示さなかった。そこで、SAGV感染S2細胞を5日毎に4倍希釈ナ継代した。15回継代後の培地中のウイルスをBHK21細胞でプラークアッセイしたところ、10e+5pfu/ml程度で小型、微小型、および極大型プラークを形成する3種類の変異型ウイルスが、さらに45回継代したところ、小型と微小型の中間型のプラークを形成する変異型ウイルスが検出さ黷ス。これらの変異型ウイルスを限界希釈法によりBHK21細胞を用いてクローニングした。変異型ウイルスのゲノムを野生型ウイルスと比較したところ、nsP2を除く3種類の非構造タンパク質およびE1/E2膜タンパク質に複数のアミノ酸置換が認められ、1種類の変異型ウイルスからは3´末端非翻訳領域の欠失が認められた。今後、これらの変異がプラーク表現型に与える影響を調査するとともに、ウイルスゲノム上のRNAi抑制因子の特定を進める必要がある。
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