Human-immunodeficiency virus (HIV)の標的細胞への侵入は、標的細胞表面に発現されているCD4とHIVのエンベロ-ププロテインgq120の結合のみでは充分でなく、CCR-5やCXCR-4が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。したがって、CCR-5、CXCR-4とそのリガンドとの相互作用を原子レベルの分解能で解明することは、HIVの感染機構を考える上で極めて重要と考える。本研究では、1)核磁気共鳴法(NMR)による受容体-リカンド相互作用解析法の開発、2)受容体の高効率発現系の開発を行い、研究対象としてCCR-5およびMIP-1α等を取り上げ、3)ケモカイン受容体-リガンド相互作用界面を構造生物学的に同定しHIV感染機構の解明を目指した。 本年度は、項目1)に関し、NMR測定法の研究を行った。NMRは生理的条件下における蛋白質の相互作用解析に対して強力な解析法である。しかしながら、受容体のような高分子量蛋白質複合体を対象とする場合、複合体の立体構造を直接求め、そこから相互作用に関与している残基を求めることが困難なため、複合体形成に伴う主鎖アミドプロトンの化学シフト変化や水素-重水素交換速度変化がしばしば用いられてきた。しかし、それら指標により同定された界面はX線結晶構造解析により明らかとなったものと必ずしも一致することはなく、あいまいな点もあった。そこで蛋白質複合体における相互作用界面をより厳密に同定する新規NMR測定法を開発した。
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