インフルエンザウイルスの粒子は、球形、ひも状、いびつなものなど様々な形をしており、その中には8本のRNA分節が存在している。これら8本のRNA分節がどのようにしてウイルス粒子中へ取り込まれるかについてはほとんど分かっていない。そこで本研究は、リバース・ジェネティクスを駆使してこの古典的命題を解明することを目的とする。 NA蛋白質のN末51アミノ酸にFLAGエピトープを付加した蛋白質を発現する変異NARNA節をもつインフルエンザウイルスをリバース・ジェネティクス法により作製した。この変異NA RNA分節はウイルスを何代継代してもウイルス粒子中に維持されていた。NA蛋白質の開始コドンを働かないようにしても同様の結果を得た。 前述の欠損NARNA分節にGFP遺伝子を挿入したRNA分節を作製し、これをもとに一部残存しているNA蛋白質のコード領域を順次欠損させた変異RNA分節(キメラNA RNA分節)を作製した。vRNA3'側、5'側コーディング領域をそれぞれ183塩基、157塩基持つRNA分節は約90%の取り込み率であった。5'側のコーディング領域を除いたものは約40%であるのに対して、3'側のコーディング領域を除いたものは約2%の取り込み率であった。 さらにvRNAの3'側コーディング領域を21塩基持つRNA分節は約40%の取り込み率であるのに対して、3'側コーディング領域を18塩基にすると約7%と著しい取り込み率の低下が見られた。 これらの結果からNARNA分節が効率良くウイルス粒子に取り込まれるためにはNA蛋白質のコーディング領域が必要であり、vRNAの3'側21塩基が重要であることが分かった。
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