研究概要 |
プリオン病で見られる神経変性の発現機構には正常型のプリオン蛋白と病原体の本体と見られる異常型のプリオン蛋白の機能が密接に関係していると考えられている。本研究ではプリオン蛋白遺伝子欠損不死化神経細胞株におけるアポトーシス抑制能について検討した。特にアポトーシス抑制関連因子(Bcl-2,Bcl-XL, SOD及びTNF-alpha)との相互作用について検討した。また、プリオン蛋白遺伝子欠損マウス、野生型マウス、プリオン蛋白遺伝子欠損不死化神経細胞株およびプリオン蛋白遺伝子再構築不死化神経細胞株を用いて、EMC-B株、コクサッキーB1,B2,B3,B5,B6株感染時における宿主細胞内プリオン蛋白の機能を推定、検討を行なった。プリオン蛋白遺伝子欠損不死化神経細胞株に上記のBcl-2,Bcl-XL, SOD-1 cDNAを導入したところ、PrP cDNAを導入した細胞株で認められる無血清培地下でのアポトーシス抑制効果が認められた。プリオン蛋白遺伝子を再導入した細胞株におけるBcl-2,Bcl-XL及びSOD蛋白の産生を検討したところ、産生に変化は認められなかった。ところが、細胞内成分および細胞膜成分のSOD活性を測定したところ、SOD活性の上昇を認めた。正常プリオン蛋白は銅結合蛋白であることから、SOD分子に銅を供給する銅シャペロン分子であることが推測され、プリオン蛋白を発現によって細胞内SOD活性が上昇したと考えられた。また、細胞膜成分のSOD活性も上昇したことから、プリオン蛋白自体が膜上でSOD様の活性を持っていると予想された。
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