HIVウイルスに対する生体内の免疫応答をリアルタイムでとらえ、そのT細胞レセプターの遺伝子情報を獲得し、効率良くリンパ球に遺伝子導入する技術を中心とした、ウイルス特異的T細胞再構築システムの確立を目的とした研究を進めた。本研究は免疫担当細胞の抗原レセプターを操作することによりエイズ治療が可能であることを示そうとするものであり、従来の方法論とは全く異なった新たな基盤技術を提供するものと期待出来る。 我々がすでに樹立しているRT-PCRとSSCP法を組み合わせたT細胞のクロナリテイ検出システムでは、ダイナミックに変化する抗原特異的T細胞クローンの動きをリアルタイムで検出することが可能なことが種々の疾患で判明している。そこで、今年度は1)T細胞クロノタイプ検出システムによるHIVエピトプ反応T細胞クローンの絞り込み、2)リンパ球内でのTCRの情報のペアリング技術の確立、3)T細胞に効率良く遺伝子導入可能なシステムの確立などの研究を行った。 すなわち、既に判明しているHIVエピトープのペプチドをパルスした樹状細胞の投与に対して、マウスの生体内で惹起されているT細胞クローンを検出し、その細胞で使われているT細胞レセプターのα、β鎖の全長cDNA情報を獲得し、レトロウイルスベクターに組み込むことを試行している。細胞内での2つのmRNAの情報をペアリングする技術に関しては、種々の方法を試みた結果、単一細胞分離法がもっとも再現性よくペアリングが可能であることを見いだした。また、T細胞に効率よく遺伝子導入可能なベクターはレトロウイルスベクターであることも判明した。
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