研究概要 |
ヒト造血幹細胞や免疫系の解析を目的として免疫不全マウスにヒト造血細胞を移植する試みは数多くなされているが、一般にヒト細胞の生着率は満足すべきものではなく、かつT細胞への分化はみられない。今回ヒト造血幹細胞の解析に広く用いられているNOD/SCIDマウスに抗アシアロGM1抗体を投与すると生着率が改善することに着目し、このマウスのNK活性を完全に欠損させる目的でIL-2Rγ(common gamma chain)をknock outしたNOD/SCIDマウス(NOD/SCID/γ_c^<null>)を作成した。このマウスにヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を移植したところ、従来のNOD/SCIDマウスに比べて末梢血、骨髄、脾臓いずれにも全ての血球系列において極めて高いキメラ率を達成した。このマウスにおいて、NOD/SCIDマウスへの移植時には認められなかったヒトCD3陽性T細胞を認めた。脾臓においては、多数のヒトCD3陽性でCD4,CD8 single positiveおよび若子のdouble positive cellが存在し、CD45RA陽性細胞とCD45RO陽性細胞の両方がみられた。さらに、胸腺においては、多数のヒトCD4,CD8 double positive cellを認め、未熟なヒトT細胞が胸腺に特異的に存在することが明らかとなった。現在、再構築されたヒト細胞の解析を継続中であるが、このマウスはヒト造血幹細胞からのT細胞分化の詳細をin vivoで検討するモデルとして極めて有用であると考えられる。
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