研究概要 |
細菌性腸管感染症(いわゆる下痢症)の原因菌となる代表的な3菌種の病態の解析を行い、次のような成果を得た。(1)病原性大腸菌について(特に付着):EHEC/EPEC由来のTir(translocated intimin receptor)分子に対する標的細胞側の結合分子をTir-affinity column, gel-overlay assay,免疫沈降法などで検索したところ、Talinであることがわかった。このTir-TalinはそれぞれのN末端で直接結合する事、この結合がA/E (Attaching and Effacing)病変形成とF-actinの菌付着局所への集積に重要な役割を演じている事を明らかにした。(2)腸炎ビブリオについて(特に毒素):本菌の重要な病原因子(毒素TDH/TRH)が、Ca^<++>-activated Cl^-ion channelを使い、Cl^-の分泌、下痢を引き起こす事を電気生理学的手法などで明らかにした。また、TDHの作用がMonodansylcadaverineなどで阻害される事から、TDHは、細胞膜だけでなく細胞内に入り込んで毒作用を発揮する可能性も考えられる結果をえた。(3)Providencia alcalifaciensについて(特に侵入性):原因菌が特定できない食中毒事例から、常在フローラの1つと考えられてきたP. alcalifaciensを新しい食中毒の原因菌と特定した。本菌の病原性の初歩的な解析では、細胞侵入性を認めた。
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