研究概要 |
ほとんどのサイトカイン、T細胞・B細胞受容体、インスリンなどはPI3K(ホスホイノシチド3-キナーゼ)を活性化して細胞にシグナルを伝えることが報告されている。このPI3KはPIP2(ホスファチジルイノシトール-4,5-リン酸)をPIP3(ホスファチジルイノシトールー3,4,5-リン酸)に変換するキナーゼで、Aktなどを活性化し、、細胞増殖/アポトーシス抵抗性に働くことが知られている。癌抑制遺伝子PTENはこのPIP3を主な基質とするホスファターゼで、これらのシグナルを負に制御する。またPTENは様々なヒト悪性腫瘍で変異が報告されている。 我々はこれまでPTEN欠損マウスを作成したが、胎生早期に致死であったことより、各樺臓器におけるPTENの役割の解析は困難であった。そこで、次にCre-loxPシステムを用いて、B細胞特異的にPTENを欠損するマウスを作成した(CD19CrePten^<flox/flox>mice)。 このマウスでは、B1a細胞が著増し、自己抗体産生が増強していた。また、脾臓におけるB2細胞は、辺縁B細胞が著増し、濾胞B細胞は激減していた。PTEN欠損B細胞は、増殖が冗進し、アポトーシス抵抗性であり、さらに細胞遊走能も亢進していた。生化学的にはPKB/Aktが著しく亢進していた。 その他、B細胞特異的PTEN欠損マウスでは、免疫グロブリンのクラススイッチが著しく障害されており、これは刺激後、クラススイッチに重要であるactivation-induced cytidine deaminase(AID)の発現誘導の低下によるものと推定された。 このようにPTENはB細胞分化の運命決定の役割を演じ、またB細胞のホメオスタシスになくてはならない分子であることを明らかにし、現在論文を投稿中である。
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