HIV感染症の病態進行は感染者ごとに大きく異なる。本研究は、病態進行の違いを決定する宿主側の因子を明らかにすることを目的とする。平成13年度は以下の成果を得た。 (A)IL4はHIV-1のコレセプターCCR5の発現を低下させる。IL4プロモーター内-589位のCからTへの多型はIL4プロモーター活性を上昇させることが報告されている。このIL4-589TのAIDS病態進行に及ぼす影響を検討する目的で、フランスSEROCO Cohortの感染時期の特定できるHIV-1感染者427名のIL4プロモーター領域を解析した。その結果、(a)フランスにおけるIL4-589Tの頻度は15%ほどで日本人より少ないこと、(b)IL4-589Tを持つHIV-1感染者ではAIDS発症が遅延すること、が明らかになった。 (B)CCR5 893(-)はアジア人種特異的に見い出されるCCR5のコーディング領域内の多型で、フレームシフトによりC末端細胞質内領域の51アミノ酸の全てを欠く。CCR5 893(-)のHIV-1感染に及ぼす影響を検討する目的で、CCR5ならびにCCR5 893(-)を発現するセンダイウイルスを作製した。その結果、(a)CCR5 893(-)はERから先への細胞表面への輸送が効率良く進行せずに野生型CCR5の発現も阻害すること、(b)CCR5 893(-)を一本の染色体に持つドナーのCD4陽性細胞上のCCR5の発現は他のドナーと比較して著しく低下しており、R5型HIV-1の増殖も低下すること、が明らかになった。
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