マラリア原虫の小胞輸送系について以下の結果を得た。 (1)全ての真核細胞に備わっていると考えられる膜融合装置(SNARE複合体)の一つであるNSFのホモログ(PfNSF)が原虫で発現していることを見いだした。大変驚いたことに、PfNSFは原虫外にも存在しており、原虫外膜系と、原虫の病原性に重要な赤血球膜上のノブ状構造体(emp 1 and 2)の形成に関与することを示す結果を得た。成果は論文として発表した。 (2)引き続き、免疫電子顕微鏡法によりemp 1とNSFが原虫の外側にある同じ小胞上に存在することを証明した。この結果により、確かに小胞輸送により赤血球膜上のノブ状構造体(emp 1 and 2)が形成されていることが強く示唆できた。 (3)PfNSFのcDNAのクローン化に成功した。これを用いて昆虫細胞における発現系を構築し、その性質を明らかにしつつある。さらに、GFPとの融合タンパクを発現させ、原虫からのPfNSFの分泌の可視化実験を行っている (4)さらに、マラリア原虫のV-ATPase subunit cのcDNAクローン化に成功し、酵母で発現させた。予想通りPfV-ATPase subunit cは酵母のそれを相補した。原虫の膜タンパクを酵母の遺伝・生化学を用いて解析することが可能となった。論文は現在作成中である。
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