研究概要 |
本研究は新しい抗マラリア薬のリード化合物の決定・最適化を行い、コンピュータドラッグデザイン、ゲノム創薬、及びハイスループット法を駆使して新規抗マラリア薬を開発し、マラリアの流行地にそれを供給する事を最終目的とする。また、本研究は薬剤耐性マラリアの耐性機構の解明とそれに基づく分子設計により、薬剤耐性を克服できる抗マラリア薬の創製を目指し、且つ寄生原虫感染症学の分子基盤を確立しマラリア制圧に寄与するものである。 1.新規抗マラリア薬の候補を選抜する研究で、分子内ペルオキシドを有する環状過酸化物を選抜し、in vitro, in vivoの両アッセイシステム系で優れた抗マラリア作用を示す事を明らかにした。今年度はこの化合物の最適化を行い、溶解性が向上したいくつかの誘導体を選抜した。これら化合物の特性を生かし、マラリア原虫の各々画分(細胞質・核・ミトコンドリア・食胞等)と結合するタンパク質を単離・精製するための実験を計画している。 2.ロダシアニン系色素化合物、及び天然資源・常山由来の化合物の最適化を行った。新規抗マラリア薬の候補を選抜するためのスクリーニング系で選抜された2つの化合物の基本骨格をもとに種々の誘導体を作成し、抗マラリア活性と細胞毒性の試験を行った結果、高い抗マラリア活性と低毒性を有する化合物を選抜した。 3.メフロキン耐性のメカニズムを解明するために、報告されているchromosome5番目のアミノ酸変異は我々の株では見られ無かった。そこで、OFAGEにより熱帯熱マラリア原虫のchromosome14個の長さを感受性株と比較した結果、Chromosome3〜7番目で差異が見られた。しかしメフロキンに対する薬剤感受性が一桁高く、逆にクロロキンに対しては感受性が増加する結果から、メフロキンとクロロキンの間には同じ遺伝子が薬剤感受性/耐性を決定する可能性が示唆された。今後、この遺伝子を同定するための実験を計画している。
|