CD4陽性T細胞はそのサイトカイン産生能によって1型ヘルパーT細胞(Th1)と2型ヘルパーT細胞(Th2)に分類される。生体は、このTh1とTh2のバランスを保ちつつ微生物の感染に抗しており、そのバランスを保つ因子を見出すことは非常に重要であると考えられる。我々は、本研究において、Th1を誘導する細胞表面分子として、Notch-3の役割を解析することを目標とし、研究を遂行した。 まず、CD4陽性T細胞の分化におけるNotch-3の役割を検討する目的でNotch-3の細胞内領域をレトロウイルスベクターに導入した。その後、作製したレトロウイルスを5C.C7T細胞受容体トランスジェニックマウス由来のCD4陽性T細胞に導入し、Notch-3細胞内領域をT細胞内に過剰発現させることに成功した。5C.C7トランスジェニックマウス由来のCD4陽性T細胞をPCCによって低濃度で刺激をすると本来はTh2が分化する抗原濃度でもTh1が優位に分化することを見出した。また、抗インターロイキン12抗体存在下で5C.C7トランスジェニックマウス由来のCD4陽性T細胞を刺激した場合、通常はTh1はほとんど分化しないが、Notch-3をCD4陽性T細胞に過剰発現させると、対象と比較すると若干少ないがTh1が分化する事が確認された。しかしNotch-3細胞内領域をTh2クローンに導入した場合にはそのクローンがTh1に変換することはなかった。これらの結果よりNotch-3はナイーブT細胞からTh1に分化する段階に作用し、Th1の分化を助長していると考えられた。またその作用は部分的ではあるがインターロイキン12の作用を代償可能であった。 現在、マウスリーシュマニア感染症モデルを用いて、Notch-3のTh1/Th2バランスに与える影響を検討中である。
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