「今年度の成果」 (I)トキソプラズマに対するDNAワクチン法の確立 我々のこれまでの研究により、トキソプラズマ強毒株(RH株)に対する感染防御とはCD4^+TとCD8^+Tの両者が必要であることが解明されている。そこでワクチン候補遺伝子としてトキソプラズマ由来のSAG1遺伝子を用いclass II拘束性のCD4^+Tを誘導するためにpJW4304-SAG1とのフュージョンDNAを構築した。さらに、class I拘束性のCD8^+Tを誘導するためにユビキチン遺伝子とSAG1遺伝子のフュージョンDNAを作製した。これらの遺伝子をBALB/cマウスに2週間ごとに4回遺伝子銃を用いてDNAワクチン後、RH株を感染した。ユビキチン化SAG1を用いた場合、顕著なワクチン効果が誘導され、キラーT細胞活性も強かったがIFN-γ産生能はそれ程強くなかった。一方、pJW4304-SAG1遺伝子でDNAワクチンした場合には、ワクチン効果は強くなかったがIFN-γ産生能は強かった。現在さらにワクチン効果を高めるために、両遺伝子のコンビネーションおよびIL-12等のサイトカイン遺伝子とのコンビネーションにより、より効果的なワクチン効果誘導法を研究している。 (II)マラリアに対するDNAワクチン法の確立 マウスマラリア原虫であるP.yoeliiを用いた感染系を用いて、P.yoelii由来のMSP1遺伝子を用いてDNAワクチンを行った。この原虫感染に対してはMSP1遺伝子とIL-12遺伝子のコンビネーションDNAワクチン法が最も効果的で強い防御免疫を誘導した。この原虫に対してはユビキチン遺伝子等とのフュージョンDNAはそれ程効果的ではなかった。このため、MSP1の改造およびMSP3遺伝子の新しい遺伝子の構築を進めている。またIL-12遺伝子単独でもワクチン効果は得られなかった。今後さらに抗原遺伝子およびDNAワクチン法を確立していく。 (III)クルーズトリパノソーマ、リーシュマニアに対するDNAワクチン法の確立 この両者の原虫に対しては治療的にはIL-12遺伝子治療のみで著効を示すことを見出した。現在、クルーズトリパノソーマ由来のTSA遺伝子、リーシュマニア由来のLACK遺伝子を用いたDNAワクチン法の開発に着手している。 [今後の方針] 細胞内寄生性原虫のエスケープ機構の相異に対応したDNAワクチン法の確立が我々の大きな課題であり、またこのような法則性の確立はワクチン開発のうえで急務である。
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