ラツトにエンドトキシン(ET)を静脈内投与し、微小血栓形成、肺血管内皮細胞傷害および血圧低下を惹起した。これらの病態は、白血球減少によるTNF-α産生抑制や抗TNF-α抗体投与により抑制される。アンチトロンビン(AT)や活性型プロテインC(APC)投与は、これらの病態を軽減するが、選択的なトロンビン生成抑制作用を有する不活化Xaは、凝固異常のみしか抑制しなかった。 ATは、ET投与による肺TNF-αmRNA発現を抑制し、肺の誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現を抑制した。このATのTNF-α抑制作用は、ATが血管内皮細胞によるプロスタサイクリン産生を促進することにより発現されることが判明した。プロスタサイクリンは、単球のNFκBの転写活性を抑制することで、TNF-α産生を抑制する。このATによるプロスタサイクリン産生促進は、多くの臓器に分布するカプサイシン感受性知覚神経を活性化することによる。 セリンプロテアーゼであるAPCは、その酵素活性に依存して、ラツト肺のTNF-αmRNAおよびiNOSの誘導を抑制する。APCは、単球のNFκBとAP-1の活性化を抑制して、単球TNF-α産生を抑制する。 トロンボモジュリン(TM)は、血管内皮細胞膜に存在する糖蛋白で、トロンビンを結合し、血中のプロテインCを活性化して、APCを生成するが、遺伝子組み替え型可溶性TM(rTM)もこの動物モデルでは、APCと同様の作用を発揮する。 組織因子経路凝固インヒビター(TFPI)は、凝固第VIIa、およびXa因子を阻害するが、遺伝子組み替え型TFPI(rTFPI)も直接単球のTNF-α産生を抑制し、肺血管内皮細胞傷害やショックを抑制した。
|