研究概要 |
血清中に存在するマンノース結合レクチン(MBL)やフィコリンは自然免疫に働くレクチンである。ヒトMBLとフィコリンにはC1r,C1s様構造を持つセリンプロテアーゼMASP(MASP-1,MASP-2,MASP-3)と低分子量蛋白sMAPが結合している。MASP-3はMASP-1遺伝子の、また、sMAPはMASP-2遺伝子のスプライシングバリアントである。MBLやフィコリンが一旦細菌等の糖鎖へ結合するとMASPにより補体成分が分解され補体レクチン経路が活性化される。レクチン経路は生体防御や、一方で病態とも関係していると推定されているがその詳細は不明である。本研究ではMASPのノックアウトマウスを用いてレクチン経路の生体内での意義を明らかにすることと、マウスのレクチン経路を解析して、未だ不明な活性化機構の全体像の解明を目指し、以下の成果を得た。 ジーンターゲッティング法により、マウスMASP-1/-3遺伝子の第2エクソンを欠落した遺伝子改変マウス(Masp-1(+/-)と略)を作製し、更にMasp-1(+/-)同士の交配により両染色体に遺伝子変異を持つホモ型MASP-1欠損マウス(以下、Masp-1(-/-))を得た。Masp-1(-/-)はMASP-1とMASP-3をどちらも欠損していた。Masp-1(-/-)は成長遅延が見られる以外は、外見的にも組織学的にも異常を示さなかった。Masp-1(-/-)は野生型マウスに比べてインフルエンザウイルス感染で死亡しやすい傾向を示した。Masp-1(-/-)血清からマンナン-アガロースを用いてMBL-MASP複合体を部分精製して解析したところ、MASP-2とsMAPが含まれていた。また、Masp-1(-/-)血清を37℃でマンナン-アガロースと反応させるとMASP-2は活性化されるが、0℃では活性化されないことがわかった。マウス血清よりN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-アガロースを用いてGlcNAc溶出によりフィコリンの一つであるficolin-Aを部分精製し、更にMono Qで分画したところficolin-A画分に一致してMASP-2とsMAPが含まれていた。
|