1)1999年に米国で報告された市中に蔓延する強毒性MRSA株の全ゲノム配列を製品評価センターと共同研究で決定し、解析した。この株の塩基配列を、比較的弱毒である病院型のMRSA株N315、Mu50と比較したところ、病原性に関与すると考えられる毒素遺伝子数十種と、他菌種において病原性を発現するために重要な働きをもつ調節遺伝子homolog 1種が見いだされた。現在、これらの遺伝子のknockout株を作成し、順次、その病原性に及ぼす影響をマウス腹腔内感染、及び呼吸器感染実験を用いて検討中である。 2)上記市中獲得型MRSAのメチシリン耐性を担うカセット染色体SCCmecをクローン化し、その全構造を決定したところ、このSCCmecは、従来の病院型多剤耐性MRSAに見られる3つのタイプのSCCmecにおけるそれらと異なり、部位特異的組み換え酵素遺伝子(cassette chromosome recombinase A and B)とmec gene complex(IS1272-AmecR1-mecA-IS431)を新しい組合せで、持つことを見いだした。また、その他の領域J1-3は、いずれも短く、そこに、非β_ラクタム薬耐性遺伝子が見いだされなかった。この新しいSCCmecの証明は、これらMRSAが、病院型のものと異なり、病院の外で独自に蔓延している可能性を強く示した画期的な成果である。
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