研究概要 |
ブドウ球菌等から産生される外毒素は、免疫反応系のかく乱を誘導してショック症状をおこすことが知られているが、その詳細な機序は不明である。 最近の多剤耐性のブドウ球菌を含む感染症の蔓延とそれらが産生する外毒素によるショック症候群の対策には、外毒素のスーパー抗原(SAg)として外毒素が引き起こす免疫応答異常の機序を明らかにすることが、重要かつ急務である。本年度の研究では、SAgと通常ペプチド抗原に対して異なる反応を示すマウスの作製と解析をおこなった。1)外毒素を通常ペプチド抗原としてのみ認識反応することが可能なマウス(TCR-Vb遺伝子を広範囲に欠如させたLDマウス)を樹立し、その解析をおこなった。その結果、TSST-1を使用すると、スーパー抗原としての刺激はできないが、ペプチドとしてはMHC拘束性にT細胞に認識されることが判明し、目的に適ったモデルと判断された。2)OVA323-339をI-Ad拘束性に認識するTCR-Tgマウスは、TCR-Vb15を使用しているので理論的にTSST-1をスーパー抗原として認識する。実際にこのマウスTSS-2で免疫すると、急激に大量のサイトカイン-IL-2,4,6およびIFN_γ-を産生した。その傾向は、OVA-peptideを免疫した場合に酷似していた。TCR-Vb8を発現する他のOVA特異的TCR-TgにおいてSEBを免疫した場合に同様の結果を得た。以上の結果、3種類の特定V_β鎖を発現するミュータントマウスを用いて、スーパー抗原および通常抗原によるサイトカインストームの惹起が誘導できることを確認した。また、通常抗原とスーパー抗原によるT細胞反応をin vivoで比較する系を確立した。これらの結果を踏まえ、次年度は、TSST-1とOVA刺激によるT細胞の不応答性の違いを誘導するシグナルの比較解析、および記憶細胞としての性状保持を免疫不全マウスへの移植によって、明らかにする。
|