研究概要 |
RNAヘリケースA(RHA)は、転写統合装置,CBPとRNAポリメレースII(pol II)複合体とを仲介する因子として当研究室の中島らにより同定された(Cell 1997,Gene & Dev.1997)。当研究室では、HIVウイルスの遺伝子発現にも関与することが知られているこれら転写統合装置複合体の研究を一貫して行っている。その過程で本年度、RHAがHIVウイルスmRNAの5'端に存在するTARと呼ばれるRNA高次構造に結合する新たなる宿主因子であり、HIVの遺伝子発現に非常に重要な役割を果たしていることを証明した(JBC 2001)。さらにRHAのヘリケース活性とPol II結合能が、互いに独立して遺伝子発現を活性化することを明らかにした(MCB 2001)。 RHAは核と細胞質を行き来するシャトリング因子であるが、最近このRHAの核移行シグナルを同定した(投稿中)。核移行能を欠失させたRHAの1アミノ酸置換変異体(mNLS)は細胞質に局在し、ソマトスタチンプロモーターを用いたレポーターアッセイでは遺伝子発現の活性化能を失っていた。ところが驚くべきことに、TAR RNAの相補領域を含むHIV LTRプロモーターを用いたレポーターアッセイでは、核内で作用できないにもかかわらず、遺伝子発現の活性化能が認められた(未発表データ)。これまでRHAの作用点は主に遺伝子発現の転写段階にあると考え、実際にそれを証明してきた。しかし今回の結果によりRHAが転写後の遺伝子制御にもかかわっている可能性が示唆された。
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