研究課題
基盤研究(A)
本研究では、歪補償低次元量子構造の微細化・高品質化、および高密度化を推進して、現状の歪量子井戸構造半導体レーザを凌駕する高性能半導体レーザ、および機能光デバイスのための新しい極微構造を実現することを目的としている。本年度は昨年度実現した歪補償量子細線レーザの室温連続動作寿命試験を行うと共に、量子細線幅の不均一性の評価を行い、以下に挙げる成果を得た。1)電子線リソグラフィー、メタンと水素の混合ガスによるドライエッチングと2回の有機金属気相成長法(トップダウン的手法)によって、量子細線幅23nm、周期80nmの5層歪量子細線レーザ(量子細線幅23nm、周期80nm)の室温連続動作条件下での寿命試験を行い、10,000時間以上経過後も特性劣化が生じないことを確認した。この結果より、本研究で開拓した極微構造形成法は、実用水準の光デバイス作製に有望な低損傷界面を実現できることを明らかにした。2)さらに、極微構造形成を推進し、量子細線幅14nm、周期80nmの5層歪量子細線レーザを実現した。3)極微構造形成プロセスを検討した結果、幅27nmおよび18nmの多層歪量子細線構造において、細線幅の揺らぎ(標準偏差)が±10%以下の高い均一性が得られることを実証した。4)歪量子井戸構造を極微加工して得られる量子細線構造に残留する歪応力を考慮したバンド構造解析を世界で初めて行った。その結果、従来の理論解析では説明できなかった、細線幅に対する遷移エネルギーのブルーシフト量の実験結果を説明できることを明らかにした。5)量子閉じ込め効果による遷移エネルギーの増大を利用して、幅の広い細線状活性層を回折格子周期(240nm)で配置すると共に、幅の狭い量子細線活性層を同様の回折格子周期(240nm)で配置することにより、前者をDFBレーザ領域、後者をDBR領域として用いる分布反射型(DR)レーザを試作し、室温連続動作条件下で低電流(しきい値2.8mA)・高効率(微分量子効率35%/出力端面)・良好な単一モード動作(SMSR=55dB)を達成した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (81件)