研究課題
基盤研究(A)
酸化物セラミックスは金属材料に比べて高強度・高硬度であり、耐熱性、特に耐酸化性に優れていることから、次世代の高温構造材料として多くの期待がかけられている。Al_2O_3やZrO_2セラミックスは従来から広く工業的に利用されているものの、さらなる耐熱性あるいは靭性等の機能向上が求められている。そこで、本研究では、ジルコニア系セラミックスおよびアルミナ系を中心に超塑性変形挙動の実験的解析を行い、特に複数種の微量元素による高温延性に及ぼす効果を探った。各種の超塑性セラミックスの構造観察には現有の高分解能電子顕微鏡を用いるとともに、粒界の化学組成に関するデータをEDS及びEELSにより得た。その結果、高温強度ならびに高温クリープ特性が粒界電子構造に極めて敏感であることが見出された。この結果をもとに、高温セラミックスの耐熱性および高温での加工性改善のために従来とはまったく異なる粒界制御法を提唱することに成功した。これは、粒界に適当なドーパントを導入し、高温セラミックスの特性の飛躍的改善を目指すものである。特に、超塑性ジルコニアの高温延性は複数種のドーパント添加によって大幅に向上させることが分かり、応力低下効果の顕著なドーパントを数mol%複合添加することによって約1000%の伸び値が得られることが分かった。注目すべきは、こうしたドーパント効果が添加量に極めて敏感である事実であり、例えば超塑性特性を効率よく発現するための最適値が存在することが考えられる。こうした知見は従来の計算手法では見出されなかった点であり、量子構造設計によるセラミックス開発を行う上での新たなパラメータとして考慮する必要性が示されたと言える。
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