研究課題
基盤研究(A)
本研究は、管理生態系において土壌養分の違いが、1)植物の成長や形質の可塑性に与える影響、2)土壌動物・植食性昆虫・捕食性昆虫群集の構造と機能に与える影響、3)物質循環の現存量や分解生成速度に与える影響、を解明することを目的としている。落葉広葉樹として、コナラ及びミズナラを選定し、成分分析した土壌を用い鉢植えにして施肥を行い、土壌条件の良い区と悪い区・植食性昆虫を排除する区と排除しない区、4つの区分を設定し、実験を行った。コナラは養分条件が良い場合、昆虫の食害の程度が大きいと、コナラ・ミズナラ共に、短いシュートをたくさん出すようになった。さらにコナラでは、昆虫の食害により、1年枝からのシュート出現頻度も増加した。これら植物の反応は、昆虫の食害を小さくする植物の適応的な反応で、これらの反応により、昆虫の食害を補償しているものと思われた。コナラ及びミズナラで、個体バイオマスに対する食害及び養分の影響を調べたところ、コナラでは、養分条件の良い場合、昆虫の食害がシュート・個体レベルで、葉のバイオマスを減少させ、枝バイオマスは、シュートレベルで減少した。ミズナラでは、シュート・個体レベルで葉のバイオマスは養分条件に関わりなく減少した。これらの結果は、コナラとミズナラ2種の成長戦略の違いを反映しているものと考えられた。植栽3年後にハウスの鉢から採取した土壌を培養し、溶存態炭素・窒素濃度の変化と窒素の無機化速度・硝化速度の測定を行ったところ、食害の程度で生成される無機態窒素の形態や無機態窒素の生成速度に大きな違いはみられなかったが、土壌中の溶存態炭素濃度に違いが生じた。土壌中の溶存態炭素は土壌中の窒素無機化に影響を与えると考えられており、長期には窒素の動態に違いが生じることが推察され、昆虫類による食害が植物-土壌系の物質循環に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。これらの研究成果は、4つの学術論文(うち2編投稿中)と12の学会発表として、公表した。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
European journal of Entomology 102
ページ: 503-511
European Journal of Entomology 102
European Journal of Entomology 102(発表予定)
Population Ecology 46
ページ: 203-211
10013526657