研究概要 |
染色体1,2,3,11,13,17,19,21,22番の大腸菌人工染色体(BAC)クローンからアレイCGHを作製して検討した結果,予後良好な神経芽腫では遺伝子量の増減はほとんど認められなかったが,予後不良例では1番,11番欠失と17番増幅等遺伝子量の増減が認められた。さらに,既知遺伝子及び胎児神経組織cDNAライブラリー由来の遺伝子,遺伝子断片6500余りを用いてマイクロアレイを作製し,遺伝子発現解析したところ,予後不良腫瘍で43遺伝子,予後良好な腫瘍の中で自然退縮例,分化例各々20,32遺伝子の発現増強を認めた。また,マイクロソート法にてスクリーニングしたところ,各々に発現増強した遺伝子を63と39個みいだした。これらを,定量PCRにて検索し,発現が異なる既知の遺伝子を21個(MYCN, hTERT, VGEF, Cyclin G1,CD44,NGF, Caspase等)明らかにした。病理所見でheterogeneityの存在する混成型腫瘍の異形性の強い部分,同一腫瘍内でテロメラーゼ発現が明かな部分,また化学療法後の残存或いは再発部分をマイクロダイセクションを切り出して,アレイ解析した結果,23種類の遺伝子の発現上昇を認めた。これらの多くは,予後不良腫瘍で発現上昇した遺伝子と一致していた。一方,明かな退縮例ではCaspase 8などアポトーシス関連遺伝子の発現増強が,一方分化例ではNGFなどの成長因子の発現がみられた。テロメラーゼが活性化した腫瘍とその他の腫瘍の比較から,発現の異なる遺伝子を102個スクリーニングしたがその中でHSP90とRAD50はテロメラーゼの活性化に直接関与しており,臨床応用可能と考えられた。 以上の結果を,臨床的データとから,悪性度を規定し,個別化に有用な遺伝子変異は1p,11p,17q,遺伝子発現は21種類と考えられた。
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