研究概要 |
口腔免疫反応および口腔疾患における補助シグナル分子の役割を明らかにするために,第1年目である本年度は,研究遂行に必要な複数の補助シグナル分子のサブクローニングを行い,遺伝子導入細胞株,補助シグナル分子に対するモノクローナル抗体および遺伝子組み換え蛋白などを作製し,免疫担当細胞における各受容体およびリガンド分子の発現,サイトカインによる発現誘導およびその制御,in vitroにおけるT細胞機能発現への関与について検討した. 主に研究の対象とした補助シグナル経路は,PD-1-PD-L1/PD-L2経路とICOS-B7h経路の2つである.研究の結果,CTLA-4と並ぶ抑制シグナル分子として報告されていたPD-1のT細胞における抑制作用はCTLA-4と比較し明らかではなく,2つのリガンドPD-L1あるいはPD-L2結合の違い,もしくはPD-1以外の異なる受容体の存在により複雑に制御されている可能性が示唆された. また、PD-L1の発現が恒常的で広範囲の分布を示すのに対し,PD-L2発現は樹状細胞にかなり限されていることが明らかになった.ICOSリガンドであるB7hは,B細胞に恒常的な発現局が認められるものの,発現変化は乏しく,プロフェッショナル抗原提示細胞である樹状細胞およびマクロファージにおける発現誘導もCD80/CD86分子と比較すると弱く,炎症性サイトカインにより抑制される傾向が認められた.興味深いことに,B7hは上皮系腫瘍細胞株,角化細胞,血管内皮細胞において,サイトカイン刺激により速やかに発現誘導あるいは制御されることから,T細胞上のICOSはこれらの組織細胞上のB7hと何らかの相互反応に関与している可能性が示唆された.以上の結果から,免疫応答においてPD-1およびICOSは,CD28/CTLA-4とはかなり異なる役割を担っている可能性が示唆された.
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