研究課題
基盤研究(A)
本研究では、病原性、非病原性SHIVの感染後の体内増殖・潜伏部位と組織病理学的変化を比較解析し、そこからその病態形成の違いが何に起因しているのかを明らかにすることを目的とした。アカゲザルにAIDSを発症させる病原性株(SHIV89.6P)の静脈内接種では、感染後2週以内に末梢血CD4^+T細胞は枯渇し、血漿ウイルスRNA量は高値を示す。その特徴的な病変として、胸腺で髄質細胞を中心にウイルス産生細胞強陽性所見が得られ、4週目には胸腺組織の崩壊が認められた。プロウイルスDNA量も2週目で胸腺、脾臓、腸間膜リンパ節で高値であったことから、感染初期にこれらのリンパ系臓器で盛んに増殖していることがわかった。一方、非病原性株(SHIVNM-3rN)では、末梢血CD4^+T細胞の減少はなく、血漿ウイルスRNA量も4週目以降は検出限界以下となり、胸腺組織への傷害も認められなかった。以上のことから、感染初期でのウイルスの臓器指向性と増殖力の違いがその後の病態に反映していると考えられた。HIV-1の主要な感染ルートは性的接触による経粘膜感染である。次に我々は、直腸よりSHIV(病原性株;C2/1、非病原性株;cl64)を経粘膜感染させ、感染初期のウイルス増殖部位および宿主免疫細胞動態の解析を行った。C2/1は感染後3日までに全身へ拡散しており、胸腺やリンパ系臓器で盛んに増殖するが、感染局所である腸管では感染しているものの増殖は認められなかった。cl64ではC2/1と異なり、まず腸管で増殖した後、腸間膜リンパ節、胸腺へと増殖部位が移行した。CD4^+T細胞はC2/1感染ザルでは末梢血や胸腺だけでなく腸管粘膜でも減少・枯渇し、特に腸管ではCD4^+CD8^+T細胞の減少が先だって顕著に認められた。一方、cl64感染ザルの腸管では感染後4週目でもCD4^+CD8^+T細胞は維持されており、CD4^+T細胞の減少も小腸のみに限られていた。以上から感染初期の腸管でのウイルス増殖と免疫細胞群の動態が、経粘膜感染による病態に大きく影響することが考えられた。
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