研究課題
基盤研究(A)
胚性幹細胞(ES細胞)とは、1個の胚盤胞内細胞塊に由来する継代培養可能な細胞であり、他の胚と集合したり注入したのち受胚雌に移植するとキメラ個体が得られることから、遺伝子組換えを行ったES細胞から作出したキメラを正常なマウスと交配することによって多数のモデルマウスが作出されている。1999年に、ES細胞を除核未受精卵へ移植することによって生殖能力を持つマウス個体が得られる場合のあることが明らかとなった。しかしながら、産子への発生率は極めて低く、また得られた産子の多くは分娩直後に死亡することが明らかになっている。遺伝子組換えを行ったES細胞から正常な胎子や生殖能力のあるマウスを高率に得る技術が樹立できると、現在のキメラを介する方法にとってかわることとなり、実験動物学や基礎医学分野の研究への波及効果はきわめて大きい。そこで本研究では、高率にES細胞由来の産子を得ることを最終的な目的として、核移植卵の発生能に及ぼす諸条件を検討した。その結果、次の成果を得た。検討した項目は、核移植卵の集合による細胞数の増加、ES細胞の遺伝的背景、細胞周期、核移植方法、融合方法、活性化刺激方法、核移植卵の発生速度の影響である。本研究によって、マウスES細胞の核移植によって確実にクローンマウスを得ることができるようになった。しかしながら、核移植卵の体外における発生率は40〜80%と高いが、産子への発生率は1〜5%と低く、産子生産率を向上させるための検討がさらに必要と考えられた。
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